さるのず
猿の図

冒頭文

1 大野卯平邸の豪華な応接室。壁によせかけ多量の荷造りした疎開荷物。フランス窓をこちらに一段さがるとテラス、テラスの下が防空壕になっている。人が三四人しゃがんでおれるくらいの広さの壕の内部が、こちらから見える。 背広姿の大野卯平と第一装の軍装の薄田が、室の中央の円卓に向い合ってソファにかけ黙々としてブランディを飲んでいる。その二人に並んでもう一つのソファのまんなかに、小さく

文字遣い

新字新仮名

初出

「風刺文学」1947(昭和22)年9月号

底本

  • 三好十郎の仕事 第三巻
  • 學藝書林
  • 1968(昭和43)年9月30日