きゅうぶんにほんばし 14 せいようのとうなす
旧聞日本橋 14 西洋の唐茄子

冒頭文

青葉の影を「柳の虫」の呼び声が、細く長く、いきな節に流れてゆく。  ——孫太郎(まごたろ)むしや、赤蛙(あかがえる)…… ゆっくりとした足どりで、影を踏むように、汚れのない黒の脚絆(きゃはん)と草鞋(わらじ)が動く——小(ち)いさな引出しつきの木箱を肩から小腋(こわき)にかけて、薄藍色の手拭(てぬぐい)を吉原かむりにしている。新道にはまだ片かげがあって打水(うちみず)に地面がしっとりと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 旧聞日本橋
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1983(昭和58)年8月16日