かなしきおもいで (のぐちうじょくんのほっかいどうじだい)
悲しき思出 (野口雨情君の北海道時代)

冒頭文

◎本年四月十四日、北海道小樽で逢つたのが、野口君と予との最後の会合となつた。其時野口君は、明日小樽を引払つて札幌に行き、月の末頃には必ず帰京の途に就くとの事で、大分元気がよかつた。恰度(ちやうど)予も同じ決心をしてゐた時だから、成るべくは函館で待合して、相携へて津軽海峡を渡らうと約束して別れた。不幸にして其約束は約束だけに止まり、予は同月の二十五日、一人函館を去つて海路から上京したのである。 ◎

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 石川啄木全集第四巻 評論・感想
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年3月10日