隅田川(すみだがわ)の水はいよいよ濁りいよいよ悪臭をさえ放つようになってしまったので、その後わたくしは一度も河船には乗らないようになったが、思い返すとこの河水も明治大正の頃には奇麗(きれい)であった。 その頃、両国(りょうごく)の川下(かわしも)には葭簀張(よしずばり)の水練場(すいれんば)が四、五軒も並んでいて、夕方近くには柳橋(やなぎばし)あたりの芸者が泳ぎに来たくらいで、かなり賑(にぎや