とおかのきく
十日の菊

冒頭文

一 庭の山茶花(さざんか)も散りかけた頃である。震災後家を挙げて阪地に去られた小山内(おさない)君がぷらとん社の主人を伴い、倶(とも)に上京してわたしの家を訪(おとな)われた。両君の来意は近年徒(いたずら)に拙(せつ)を養うにのみ力(つと)めているわたしを激励して、小説に筆を執らしめんとするにあったらしい。 わたしは古机のひきだしに久しく二、三の草稿を蔵していた。しかしいずれも凡作

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 荷風随筆集(下)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年11月17日