でんずういん
伝通院

冒頭文

われわれはいかにするともおのれの生れ落ちた浮世の片隅を忘れる事は出来まい。 もしそれが賑(にぎやか)な都会の中央であったならば、われわれは無限の光栄に包まれ感謝の涙にその眼を曇らして、一国の繁華を代表する偉大の背景を打目戍(うちまも)るであろう。もしまたそれが見る影もない痩村(やせむら)の端(はず)れであったなら、われわれはかえって底知れぬ懐(なつか)しさと同時に悲しさ愛らしさを感ずるで

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 荷風随筆集(上)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年9月16日