てらじまのき
寺じまの記

冒頭文

雷門(かみなりもん)といっても門はない。門は慶応元年に焼けたなり建てられないのだという。門のない門の前を、吾妻橋(あずまばし)の方へ少し行くと、左側の路端(みちばた)に乗合自動車の駐(とま)る知らせの棒が立っている。浅草郵便局の前で、細い横町(よこちょう)への曲角で、人の込合(こみあ)う中でもその最も烈しく込合うところである。 ここに亀戸(かめいど)、押上(おしあげ)、玉(たま)の井(い

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 荷風随筆集(上)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年9月16日