じゅうろく、しちのころ |
| 十六、七のころ |
冒頭文
十六、七のころ、わたくしは病のために一時学業を廃したことがあった。もしこの事がなかったなら、わたくしは今日のように、老に至るまで閑文字(かんもじ)を弄(もてあそ)ぶが如き遊惰(ゆうだ)の身とはならず、一家の主人(あるじ)ともなり親ともなって、人間並の一生涯を送ることができたのかも知れない。 わたくしが十六の年の暮、といえば、丁度日清戦役の最中(もなか)である。流行感冒に罹(かか)ってあくる年の
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 荷風随筆集(下)〔全2冊〕
- 岩波文庫、岩波書店
- 1986(昭和61)年11月17日