じゅうくのあき
十九の秋

冒頭文

近年新聞紙の報道するところについて見るに、東亜の風雲はますます急となり、日支同文の邦家(ほうか)も善鄰の誼(よ)しみを訂(さだ)めている遑(いとま)がなくなったようである。かつてわたくしが年十九の秋、父母に従って上海(シャンハイ)に遊んだころのことを思い返すと、恍(こう)として隔世の思いがある。 子供の時分、わたくしは父の書斎や客間の床(とこ)の間(ま)に、何如璋(かじょしょう)、葉松石

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 荷風随筆集(下)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年11月17日