さとのこんじゃく
里の今昔

冒頭文

昭和二年の冬、酉(とり)の市(いち)へ行った時、山谷堀(さんやぼり)は既に埋められ、日本堤(にほんづつみ)は丁度取崩しの工事中であった。堤から下りて大音寺前(だいおんじまえ)の方へ行く曲輪外(くるわそと)の道もまた取広げられていたが、一面に石塊(いしころ)が敷いてあって歩くことができなかった。吉原を通りぬけて鷲神社(おおとりじんじゃ)の境内(けいだい)に出ると、鳥居前の新道路は既に完成していて、平

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 荷風随筆集(上)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年9月16日