くさもみじ
草紅葉

冒頭文

○ 東葛飾(ひがしかつしか)の草深いあたりに仮住(かりずま)いしてから、風のたよりに時折東京の事を耳にすることもあるようになった。 わたくしの知っていた人たちの中で兵火のために命を失ったものは大抵浅草の町中に住み公園の興行ものに関与(たずさわ)っていた人ばかりである。 大正十二年の震災にも焼けなかった観世音(かんぜおん)の御堂(みどう)さえこの度はわけもなく灰になってしま

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 荷風随筆集(下)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年11月17日