いかるがものがたり
斑鳩物語

冒頭文

上 法隆寺の夢殿の南門の前に宿屋が三軒ほど固まつてある。其の中の一軒の大黒屋といふうちに車屋は梶棒を下ろした。急がしげに奥から走つて出たのは十七八の娘である。色の白い、田舎娘にしては才はじけた顔立ちだ。手ばしこく車夫から余の荷物を受取つて先に立つ。廊下を行つては三段程の段階子を登り又廊下を行つては三段程の段階子を登り一番奥まつた中二階に余を導く。小作りな体に重さうに荷物をさげた後ろ姿が余

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 近代浪漫派文庫 7 正岡子規 高浜虚子
  • 新学社
  • 2006(平成18)年9月11日第1刷