へんろ
遍路

冒頭文

那智(なち)には勝浦(かつうら)から馬車に乗って行った。昇り口のところに著(つ)いたときに豪雨が降って来たので、そこでしばらく休み、すっかり雨装束(あましょうぞく)に準備して滝の方へ上って行った。滝は華厳(けごん)よりも規模は小さいが、思ったよりも好かった。石畳(いしだたみ)の道をのぼって行くと僕は息切(いきぎ)れがした。 さてこれから船見峠(ふなみとうげ)、大雲取(おおくもとり)を越え

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1928(昭和3)年2月10日~13日

底本

  • 山の旅 大正・昭和篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2003(平成15)年11月14日