かわいいやま
可愛い山

冒頭文

岩と土とからなる非情の山に、憎いとか可愛(かわい)いとかいう人間の情をかけるのは、いささか変であるが、私は可愛くてならぬ山を一つもっている。もう十数年間、可愛い、可愛いと思っているのだから、男女の間ならばとっくに心中しているか、夫婦になっているかであろう。いつも登りたいと思いながら、まだその機会を得ぬ。今年の秋あたりには、あるいは行くことが出来るかも知れぬ。もっとも山には、登って見て初めて好きにな

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 山の旅 大正・昭和篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2003(平成15)年11月14日