ひとこおりのシャスタさん
火と氷のシャスタ山

冒頭文

山仲間から、アメリカで好きな山は何か、と聞かれると、一番先(さ)きに頭に浮ぶのは、シャスタ山である。がそれは必ずしも、好きであるからではない、位置が南に偏(かたよ)り過ぎて、雪が早く融けるし、氷河は小(ち)ッぽけな塊(かたまり)に過ぎないし、富士山のように、新火山岩で、砂礫(されき)や岩石が崩れ易(やす)いので、高山植物は稀薄であるし、「好き」になるところまでは行かないが、それでも、最も多く心を惹

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1929(昭和4)年7月

底本

  • 山の旅 明治・大正篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2003(平成15)年9月17日