ほだかだけやりがたけじゅうそうき
穂高岳槍ヶ岳縦走記

冒頭文

一 神秘の霊峰 信飛の国界に方(あた)りて、御嶽(おんたけ)・乗鞍・穂高・槍の四喬岳のある事は、何人(なんぴと)も首肯(しゅこう)する処(ところ)、だが槍・穂高間には、なお一万尺以上の高峰が沢山群立している、という事を知っている者は稀(まれ)である。で折もあらばこの神秘の霊域を探検して世に紹介しようと思うていた。幸い四十二年八月十二日正午、上高地(かみぐち)の仙境に入門するの栄を得た。

文字遣い

新字新仮名

初出

「山岳 五の一」1910(明治43)年3月

底本

  • 山の旅 明治・大正篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2003(平成15)年9月17日