あきのしゅぜんじ
秋の修善寺

冒頭文

一 九月の末におくれ馳(ば)せの暑中休暇を得て、伊豆の修善寺温泉に浴し、養気館の新井方にとどまる。所作為(しょざい)のないままに、毎日こんなことを書く。 二十六日。きのうは雨にふり暮らされて、宵から早く寝床に這入(はい)ったせいか、今朝は五時というのにもう眼が醒めた。よんどころなく煙草(たばこ)をくゆらしながら、襖(ふすま)にかいた墨絵の雁と相対すること約半時間。おちこちに鶏が

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 岡本綺堂随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年10月16日