ぼんうんあんまんろく
梵雲庵漫録

冒頭文

幼い頃の朧(おぼ)ろげな記憶の糸を辿(たど)って行くと、江戸の末期から明治の初年へかけて、物売や見世物の中には随分面白い異(かわ)ったものがあった。私はそれらを順序なく話して見ようと思う。       一 まず第一に挙げたいのは、花見時の上野に好(よ)く見掛けたホニホロである。これは唐人(とうじん)の姿をした男が、腰に張子(はりこ)で作った馬の首だけを括(くく)り付け、それに跨(またが

文字遣い

新字新仮名

初出

「七星」第2号、1923(大正12)年5月

底本

  • 梵雲庵雑話
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1999(平成11)年8月18日