トイレット
トイレット

冒頭文

何年も何十年も前のことが記憶の中のどこかによどんで残つてゐて、明方の夢にそれをはつきり見ることがある。これは夢にみたのではなく、何の用もなくつながりもないことなのに、ふいと思ひ出したのである。明治もまだわかい二十四五年ごろか、もつと前の事だつたかもしれない、麻布一聯隊の兵舎に近い三河台の丘の家にゐた頃のこと。 三河台の家は、私がそこで生れて十八まで暮した家であるから思ひ出すこともしばしば

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 燈火節
  • 月曜社
  • 2004(平成16)年11月30日