みについたもの
身についたもの

冒頭文

M夫人は私たち十二三の時からの学校友達で、むかしも今も親しくしてゐるが、彼女は実家も婚家も非常に裕福なので趣味としての諸芸に達して、殊にお茶や歌では趣味以上のくろうとである。その彼女がある時言つた。「私はずゐぶんいろいろなお稽古ごとをやつてみましたけれど、何といつても、十代の時習つたものが一ばん身についてゐますね、それはお琴。家庭の人となつて琴なんぞ弾いてゐる時間もなく、何年となく捨てつぱなしにし

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 燈火節
  • 月曜社
  • 2004(平成16)年11月30日