まどわしのしがつ
まどはしの四月

冒頭文

その小説はエンチヤンテッド・エプリル(まどはしの四月)といふ題であつたとおぼえてゐる。大正のいつ頃だつたか、もう三十年も前に読んで、題までも殆ど忘れてゐたが、二三日前にふいと思ひ出した。ロンドンで出版されて当時めづらしいほどよく売れた大衆もので、作者の名も今はわすれた。 郊外に住む中流の家庭の主婦が街に買物に出たかへりに、自分の属してゐる婦人クラブに寄つてコーヒーを飲み、そこに散らばつてゐた

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 燈火節
  • 月曜社
  • 2004(平成16)年11月30日