ふるいでんせつ
古い伝説

冒頭文

いつ、どんな本で読んだ伝説かはつきり覚えてゐない、夢のなかでどこかの景色を見て、蒼ぐらい波の上に白い船が一つみえてゐたやうに、伝説の中の女の姿を思ひ出す、美しい女である。世界最初の女、イヴよりもずつと前にこの世界にゐた美しいリリスである。 神は七日のあひだに、つまり七千年か七万年か計算することはむづかしいが、天地とその中の万物をお造りなされて、その創作のすべてをよしと御らんになつた。何も

文字遣い

新字旧仮名

初出

「美しい暮しの手帖 四号」1949(昭和24)年7月

底本

  • 燈火節
  • 月曜社
  • 2004(平成16)年11月30日