リラのてがみ
リラの手紙

冒頭文

久能は千駄木の青江の家に移って卒業論文に取りかかった。同じ科の連中に較べると、かなり遅れていたので、狼狽気味に文献を調べ、此方に来ていない参考書を取り寄せたりした。大学の語学的な片よりを嫌って、その間近の喫茶店などにとぐろを巻いて文学をやる友達のいないのを歎じたり、気焔をあげたりしていたが、実際には創作など発表している先輩がいても、自分の方から頭をさげて行く気にならないで、誰か誘いかける奴はいない

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 行動 第二巻第二號
  • 紀伊国屋出版部
  • 1934(昭和9)年2月1日