ばしょう
芭蕉

冒頭文

佛蘭西の旅に行く時、私は鞄の中に芭蕉全集を納(い)れて持つて行つた。異郷の客舍にある間もよく取出して讀んで見た。『冬の日』、『春の日』から、『曠野』、『猿簑』を經て『炭俵』にまで到達した芭蕉の詩の境地を想像するのも樂しいことに思つた。 昔の人の書いたもので、それを讀んだ時はひどく感心したやうなものでも、歳月を經る間には自然と忘れてしまふものが多い。その中で、折にふれては思出し、何時(いつ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 飯倉だより
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1943(昭和18)年5月5日第1刷