序章 随分久しい馴染だつた神田伯龍がポツクリ死んで、もう三年になる。たび〳〵脳溢血を患つてゐた彼だつたから、決してその死も自然でなかつたとは云へまいが、兎に角直つて平常に高座もつとめ、酒も煙草も慎んでゐた丈けに、やはりその死は唐突の感をおぼえないわけには行かなかつた。 死ぬ前日、彼はある寄席の高座で、必らずいつもは、 「……云々と云ふ物語を、こんな一席の講談に纏めて見ました」 かう云つて結ぶ