しろいみち
白い道

冒頭文

一 ——ほこりっぽい、だらだらな坂道がつきるへんに、すりへった木橋がある。木橋のむこうにかわきあがった白い道路がよこぎっていて、そのまたむこうに、赤煉瓦(あかれんが)の塀と鉄の門があった。鉄の門の内側は広大な熊本煙草(たばこ)専売局工場の構内がみえ、時計台のある中央の建物へつづく砂利道は、まだつよい夏のひざしにくるめいていて、左右には赤煉瓦の建物がいくつとなく胸を反(そ)らしている。——

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1948(昭和23)年1月

底本

  • 徳永直文学選集
  • 熊本出版文化会館
  • 2008(平成20)年5月15日