奚山(けいざん)は高密(こうみつ)の人であった。旅に出てあきないをするのが家業で、時どき蒙陰(もういん)県と沂水(ぎすい)県の間を旅行した。ある日その途中で雨にさまたげられて、定宿(じょうやど)へゆきつかないうちに、夜が更(ふ)けてしまった。宿をかしてくれそうな物を売る家の門口をかたっぱしから叩(たた)いてみたが、返事をするものがなかった。しかたなしに廡下(のきした)をうろうろしていると、一軒の家