一 私は今年四十二才になる。ちょうどこの雑誌の読者諸君からみれば、お父さんぐらいの年頃であるが、今から指折り数えると三十年も以前、いまだに忘れることの出来ないなつかしい友達があった。この話はつくりごとでないから本名で書くが、その少年の名は林茂といった心の温(あたた)かい少年で、私はいまでも尊敬している。家庭が貧しくて、学校からあがるとこんにゃく(蒟蒻)売りなどしなければならなかった私は、学校でも友