こうじょうしんぶん
工場新聞

冒頭文

一 「タッちゃん、なに読んでるの?」 これも読書組の、トシが傍(そば)へよってきて、のぞきこんだ。馴(な)れた臭気だけれど、ムッとめまいするような煙草(たばこ)の匂(におい)がした。 「いやよ」 タツは、慌(あわ)てて読んでたものをかくした。うすッぺらな、ガリ版ずりの「赤煉瓦(あかれんが)」というのだった。 「意地わる!」 作業帽の下から、赤ちゃけた頭髪をハミ出さしたトシは、タツをぶつ真似(ま

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1932(昭和7)年8月

底本

  • 徳永直文学選集
  • 熊本出版文化会館
  • 2008(平成20)年5月15日