わたしがじゅうしごさいのとき
私が十四五歳の時

冒頭文

過去の生活は食つてしまつた飯のやうなものである。飯が消化せられて生きた汁になつて、それから先の生活の土臺になるとほりに、過去の生活は現在の生活の本になつてゐる。又これから先の、未來の生活の本になるだらう。併し生活してゐるものは、殊に體が丈夫で生活してゐるものは、誰も食つてしまつた飯の事を考へてゐる餘裕はない。 私は忙しい人間だ。過去の生活などを考へてはゐられない。もう少し爺さんにでもなつ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「少年世界 第十五卷第十二號」1909(明治42)年9月1日

底本

  • 鴎外全集 第二十六卷
  • 岩波書店
  • 1973(昭和48)年12月22日