はせがわたつのすけ
長谷川辰之助

冒頭文

逢ひたくて逢はずにしまふ人は澤山ある。 それは私の方から人を尋ねるといふことが、殆ど絶待的に出來ないからである。何故出來ないか、私には職務があると辯解して見る。併し此辯解は通らない。誰だつて職務の無いものはあるまい。何かしらしてゐるだらう。 役所に出る前、役所を引いた後、休日などがあるから、人を尋ねれば尋ねられる筈である。ところが、朝なぞは朝飯を食つてゐるとお客に掴まる。夕方歸

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「二葉亭四迷」易風社、1909(明治42)年8月7日

底本

  • 鴎外全集 第二十六卷
  • 岩波書店
  • 1973(昭和48)年12月22日