ドアのひびき
闥の響

冒頭文

私が巴里(パリー)に居た時、一時、リャンコルン街の五十番に家を借りていた事がある、この家屋は四階建で、私の居たのもこの四階の上であった、すると隣家(となり)に十二ばかりの女の子を上に八歳(やつ)ばかりと五歳(いつつ)ばかりの男の子が居た。父親というのは、何の職務をしていたのか、自分は、終(つい)ぞ家人に訊ねた事もなく、如何(どう)も解らなかったが、毎日早朝から丁度(ちょうど)巡査の様な服装をして、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日