しろいちょう
白い蝶

冒頭文

友の家を出たのは、最早(もう)夕暮であった、秋の初旬(はじめ)のことで、まだ浴衣(ゆかた)を着ていたが、海の方から吹いて来る風は、さすがに肌寒い、少し雨催(あめもよい)の日で、空には一面に灰色の雲が覆(おお)い拡(ひろが)って、星の光も見えない何となく憂鬱な夕(ゆうべ)だ、四隣(あたり)に燈(ともし)がポツリポツリと見え初(そ)めて、人の顔などが、最早(もう)明白(はっきり)とは解(わか)らず、物

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日