つきよとうげ
月夜峠

冒頭文

これも同じく遠野(とおの)で聞いた談(はなし)だ。その近傍(きんぼう)の或(ある)海岸の村に住んでいる二人の漁夫(ぎょふ)が、或(ある)月夜に、近くの峠を越して、深い林の中を、二人談(はな)しながら、魚類の沢山入っている籠を肩にして、家の方へ帰って来ると、その途中で、ひょっこりとその一人の男の女房に出会った。その夫は女房に向って、「お前は、今頃何処(どこ)へ行くのだ」と訊(たず)ねると、女房は、「

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日