ばけものやしき
怪物屋敷

冒頭文

私が北豊島郡染井(きたとよしまごおりそめい)の家(いえ)に移ったのが、明治三十五年の春であった。何しろ滅法(めっぽう)安値(やす)い家で、立派な門構(もんがまえ)に、庭も広し、座敷も七間(ななま)あって、それで家賃が僅(わず)かに月三円五十銭というのだから、当時まだ独身者(ひとりもの)の自分には、願ったり適(かな)ったりだと喜んで、早速(さっそく)その家に転居をすることに定(き)めたのであった。一

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日