よづりのかい
夜釣の怪

冒頭文

私の祖父(じじい)は釣(つり)が所好(すき)でして、よく、王子(おうじ)の扇屋の主人や、千住(せんじゅ)の女郎屋の主人なぞと一緒に釣(つり)に行きました。 これもその女郎屋の主人と、夜釣に行った時の事で御座(ござ)います。 川がありまして、土堤(どて)が二三ヶ所、処々(ところどころ)崩れているんだそうで御座(ござ)います。 其処(そこ)へこう陣取りまして、五六間(けん

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日