いまどぎつね
今戸狐

冒頭文

これは狐か狸だろう、矢張(やっぱり)、俳優(やくしゃ)だが、数年(すねん)以前のこと、今の沢村宗十郎(さわむらそうじゅうろう)氏の門弟で某(なにがし)という男が、或(ある)夏の晩他所(よそ)からの帰りが大分遅くなったので、折詰を片手にしながら、てくてく馬道(うまみち)の通りを急いでやって来て、さて聖天(しょうてん)下の今戸橋(いまどばし)のところまで来ると、四辺(あたり)は一面の出水(でみず)で、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日