ゆきのすくそで
雪の透く袖

冒頭文

古びた手帳を繰(く)ると、明治廿二(にじゅうに)年の秋、私は東北の或(ある)聯隊(れんたい)に軍曹をして奉職していたことがあった。丁度(ちょうど)その年自分は教導団を卒業した、まだうら若い青年であった。 当時、その聯隊(れんたい)の秋季機動演習は、会津(あいづ)の若松(わかまつ)の近傍(きんぼう)で、師団演習を終えて、後(のち)、我聯隊(れんたい)はその地で同旅団の新発田(しばた)の歩兵

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日