にめんのこと
二面の箏

冒頭文

自分の京都(きょうと)時代にあった咄(はなし)をしよう。 元来箏(こと)という楽器は日本の楽器中でも一番凄みのあるものだ、私がまだ幼い時に見た草艸紙(くさぞうし)の中に豊國(とよくに)だか誰だったか一寸(ちょっと)忘れたが、何でも美しいお姫様を一人の悪徒(わるもの)が白刃で真向(まっこう)から切付ける。姫は仆(たお)れながらに、ひらりと箏(こと)を持ってそれをうけている、箏(こと)は斜め

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日