まんようのてこなとうないおとめ
万葉の手古奈とうなひ処女

冒頭文

或日私は沈丁花の匂ふ窓辺で万葉集をひもどいてゐる中、ふと高橋虫麿の葦屋の菟名負処女(うなひをとめ)の墓の長歌に逢着して非常な興味を覚えたのである。 人も知る如く虫麿は、かの水江浦島子や、真間の手児名や、河内大橋を独り渡りゆく娘子等をよんで、集中異彩を放つ作家であるが、此うなひ処女の一篇はことにあはれ深いものである。 手を翻せば雲となり、手を覆へば雨となる、萍の如き現代人はかうし

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 杉田久女全集第二巻
  • 立風書房
  • 1989(平成元)年8月1日