ばんしゅうのころ
晩秋の頃

冒頭文

秋は深くなつた。落葉ががら〳〵と家の周囲を廻つて通る。朝から障子に日が当つて、雀がチヤ〳〵と鳴いて居る。芭蕉の葉は既に萎(しほ)れた。 栗の実を拾ひに、競つて朝早く子供等の起きたのはつい此間であつたが、今は落葉が深く積つて、それを掃く音が高く聞える。朝焼火(たきび)をした火が午後まで消えずに残つて、プス〳〵と細い煙を立てゝ居ることなどもある。近所の工場の物音も手に取るやうに聞えて、黒い煙が晴れ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章世界 第四巻第十五号」1909(明治42)年11月15日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十七巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年7月10日