ぶしゅうきたいん
武州喜多院

冒頭文

これも五月のはじめ、郊外の新緑にひたろうと、ブラリ寓を出でて、西武線の下井草までバス、あれから今日の半日を伸せるだけのして見ようと駅で掲示を見る、この線の終点は川越駅になっている、発駅は高田馬場である、そこで六十何銭かを投じて川越駅までの切符を求めた。 特に川越を目的とする何等の理由は無かった、全く出来心ではあったし、川越という処も一両度訪れたことはあるのだがどうも、東京もよりでは、すで

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本随筆紀行第五巻 関東 風吹き騒ぐ平原で
  • 作品社
  • 1987(昭和62)年10月10日