しちやのつうちょう
質屋の通帳

冒頭文

京都に住んでゐた頃、たしか花時の事だつたと思ひます。私が縁端でぼんやり日向ぼつこをしてゐると、女中が来客の名刺を取次いで来ました。名刺にはK——とありました。K氏は私には初めての客でしたが、友人H氏の弟子筋にあたる人で、その頃新進作家として一寸売出してゐました。 K氏は座敷に入つて来ました。細面の色の白い、言葉数の至つて少さうな人でした。初対面の挨拶をしました後は、暫くは接穂がなささうに

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻18 質屋
  • 作品社
  • 1992(平成4)年8月25日