こうようさんじんほうもんき
紅葉山人訪問記

冒頭文

随分もう昔だ。その頃のことを繰返して見ると、いつの間にか月日が経つたといふことが染々(しみ〴〵)と考へられる。尾崎紅葉と書いた返事が来た時、自分は何んなに喜んだか知れなかつたが、其喜びももう想像が出来ない位薄い印象を残してゐるに過ぎない。 明治二十三四年頃の紅葉山人(こうえふさんじん)の名声はそれは隆々たるものであつた。紅葉、露伴と名を並べて言はれてゐたが、何方(どちら)かと謂へば、矢張紅葉の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章世界 第七巻第十四号」1912(大正元)年10月15日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十七巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年7月10日