いしをあいするもの
石を愛するもの

冒頭文

一 いろんなものを愛撫し尽した果が、石に来るといふことをよく聞いた。屠琴塢は多くの物を玩賞したが、一番好きなのは石だつた。一生かかつて奇石三十六枚を貯へ、それを三十六峰に見立てて、一つびとつ凝つた名前をつけ、客があるとそれを見せびらかせたものださうだ。鄭板橋はまた好んで石を描いたが、その石といふ石がみんな醜くて、ずばぬけて雄偉なのには、見る人がびつくりしたといふことだ。東坡が『石は文にして醜

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆88 石
  • 作品社
  • 1990(平成2)年2月25日