おんなのおんせん
女の温泉

冒頭文

一 女に取つての温泉場——関東では伊香保が一番好いといふのは、昔からの定論であるらしかつた。果してさういふ風にあの湯が効目(きゝめ)があるか何うか。それは知らないけれども、細君同伴で一まはりも湯治して来れば、屹度子供が出来るなどゝ言つたものであつた。兎に角あそこは女に取つて好い温泉場であるに相違なかつた。第一、行くのに便利であつた。上野から足、地(つち)を踏まずに行く事が出来た。それに、山も大し

文字遣い

新字旧仮名

初出

「婦女界 第二十五巻第六号」1922(大正11)年6月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十七巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年7月10日