モウタアのわ
モウタアの輪

冒頭文

一 モウタアの音がけたゝましくあたりにひゞいて聞えたので、仕度(したく)をして待つてゐた二人はそのまゝ裏の石垣になつてゐるところへと出て行つた。外洋の波の高く颺つてゐるのはそれと指さゝれたけれども、港の内は静かで、昨夜遅く入つて来たらしい二本マストの小さな汽船がそこに斜に横たへられてあるのを眼にしたばかりであつた。モウタアを仕かけたその小さな伝馬(てんま)は、すぐその向うのところに来てタプタプと

文字遣い

新字旧仮名

初出

「サンデー毎日 第四巻第四十三号」1925(大正14)年10月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十一巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年1月10日