アンナ、パブロオナ
アンナ、パブロオナ

冒頭文

一 「そんなにして遊んでゐて好いのかね?」 「大丈夫よ」 Bは笑つて、「旦那に見られては困るんぢやないか?」 「そんなこと心配ないの……見つかつて、いやだつて言つたら、よして了ふばかりですもの」 飽きも飽かれもせずに別れた時子とハルピンのホテルでさうした一夜を送らうとはBは思ひもかけなかつた。それはそこにゐるのは聞いて知つてゐた。大連で女から手紙も受取るには受取つた。しかもか

文字遣い

新字旧仮名

初出

「北海タイムス」1925(大正14)年1月15、17、19、21、23日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十一巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年1月10日