ゆりこ
百合子

冒頭文

一 百合子は雪解のあとのわるい路を拾ひながら、徐かに墓地から寺の門の方へと出て来た。 もしそこに誰かゞゐたならば、若い娘の低頭(うつむ)き勝に歩を運んでゐるのを見たばかりではなく、思ふさま泣いて泣いて泣腫らした眼と、いくらか腫れぼつたくなつてゐる眼頭と、乱れ勝になつてゐる髪とを見たであらう。また大きな牡丹の模様の出た腹合せの帯に午後の日影の線をなしてさしてゐるのを見たであらう。そしてどこの娘だ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「令女界 第四巻第四号」1925(大正14)年4月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十二巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年2月10日