むがくなおつきさま
無学なお月様

冒頭文

野尻精一氏は奈良女子高等師範の校長である。東京にゐる頃にはさうも思はなかつたが、住むでみると奈良は景色(けいしよく)がよく、景色(けいしよく)がよくないところには定(きま)つて古蹟があつて、遊ぶには恰好な土地だなと野尻氏は思つた。それにつけて、かういふ結構な土地に来て、鹿のやうに柔和で、鹿のやうに尻(し)つ尾(ぽ)の短い女学生を預つてゐる自分の身の幸福さを思ふらしかつた。 野尻氏は晩餐(

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆58 月
  • 作品社
  • 1987(昭和62)年8月25日